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【書評】食べることは生きること。小川糸著『ライオンのおやつ』あらすじ、感想

 

ライオンのおやつ

ライオンのおやつ

  • 作者:小川糸
  • 発売日: 2019/11/05
  • メディア: Kindle版
 

 

2020年本屋大賞 第2位。

 

小川糸さん久しぶりの新刊となる『ライオンのおやつ』は、若くして余命宣告を受けた女性が、瀬戸内の小島に立つホスピスで、残りの人生を丁寧に過ごす様子を描いた小説です。

 

ネタバレギリギリの詳しいあらすじと読んだ感想を紹介します。

 

『ライオンのおやつ』あらすじ

若くして余命宣告を受けた海野雫(うみのしずく)は瀬戸内の島に立つホスピス「ライオンの家」で余生を過ごすことを決め、移り住む。

雫を迎えてくれたのは、居心地の良い広々とした部屋に、青空とレモン畑と海が見渡せる景色。

ライオンの家に特に規則はなく、唯一のルールは「自由に過ごすこと」。

代表は、メイド服を着て髪をおさげにし、真っ赤なエナメルのストラップシューズを履いた老婦人、通称マドンナ(なぜこの格好なのかも作中でわかる)。懐が深く、終末医療の知識も豊富な人だ。

料理担当の姉妹は、毎回丁寧でとびきり美味しい料理を作ってくれる。

ライオンの家では、朝は毎朝違う具材のお粥、昼はバイキング形式で日替わりサンドイッチや太巻き寿司、スープやお味噌汁、夜は一人ひとりに精進料理を基本とするお膳が提供される。

そして毎週日曜日、入居者がもう一度食べたい思い出のおやつをリクエストできるおやつの時間がある。

誰のリクエストが選ばれるかは抽選で決められ、そのおやつはリクエスト者の思い出を忠実に再現されたものが提供される。

誰のリクエストかは明かされない。

ただ、おやつの時間に用紙に書かれたエピソードが読み上げられる。そこでリクエスト者の、そのおやつにまつわる大切な記憶や体験を知るのだった。

雫は、ライオンの家で余生を過ごし、1日1日を丁寧に過ごしながら、自らの生き方を振り返っていく。

 

 感想&まとめ

まず、出てくる食べ物がとにかく美味しそう!

これは小川糸本に共通する特長ですね。

読んでいるとお腹がへってきます。

 

死期が迫った女性の話というと、辛気臭い話かと思いがちですが、本書はあたたかくて優しさに満ちたストーリーでした。

 

居心地のいい部屋、清潔なシーツ、犬、おやつ、優しい味のお粥、マッサージ、音楽、青空と美しい景色、散歩、ワイン、ひきたての香り高いコーヒー‥。

いつもは気づかない何気ないところに、痛みをやわらげるほどの「癒し」が存在していることを知りました。

 

雫は自らの過去の経験や、たった一人の肉親である父親との関係にわだかまりがあり、ライオンの家に入居した当初は人生に後悔が残っていました。

しかし、ライオンの家で1日1日を丁寧に過ごしていくうちに、過去も含めた自らの人生を肯定的に受け入れられるようになっていきます。

自分が自身の人生を祝福しなくて、誰がするの?お疲れ様、よくがんばったね!と。

 

自分にはまだ死を身近に感じることはできないですが、晩年を迎えた時、こんな風に思えたらいいなぁと思いました。

 

さいごのおやつ、わたしだったら何を選ぶかな。

 

 

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